秩父昇天記(14)

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そばを堪能して荒川を渡る。


Sくん、この九去堂とKくんを飯能まで送るという。私と違い明日は出勤ゆえ、西武秩父線の沿線で良いよと言えば、電車の本数が極端に少なくなるのだとか。有難く乗せて貰うことにする。お腹がくちて三人とも無口になる。Kくんもともと無口だが。

運転中のSくんには申し訳ないながら、少しうとうとした。だが寝てないふりしながら勝手なことを考える。そば、そばなんだよなあ。S・Kくんは東国人だから当然だが、どちらかと言えばそうでない私もうどんより、そばを好む。その理由が分からない。


麺の味に差があるとも思っていない。香りの違いも分からない。無論、旨いうどんがあることは知っている。本場の讃岐うどんは旨いものだし、近場なら吉田のうどんを賞味してきた。いずれも固麺、なるほどどうやら、私は食感を好んでいるらしい。

とか思っていると、秩父の中心を抜けていく、荒川沿いにぼんやり進めば、寄居や熊谷に行ってしまう。そば屋からは一旦戻るかたちで、飯能目指してSくん号が行く。家並みが次第にぽつんぽつんとなる。ここでどういうワケか覚えていないが。


すだれおやじが車内の話題となる。イヤ間違いなく、この九去堂が話題にしたのだ。ここで自説を展開する。男はハゲたら黙ってボーズ。じたばたしない! 無論、まだメスに気に入られたいとか、仕事上差し支えると言う向きもあろう。だがしかし。

すだれに寄ってくるのは居るのだろうか。居ればカネ目当てに違いないが、もともとカネ目当てだからすだれの必要はない。そして同性には間違いなく、すだれオヤジはバカにされる。損ではないか、と言えばSくん、あんなのですかねと指を指す。


帰宅後調べれば、東大→大蔵省→代議士と、絵に描いたような議員だが、あのすだれ頭で理想論を語った所で、私は吹き出してしまう予感がある。出処進退や持論はマアまともな人のようだが、議員に剃るとか被るとかの選択肢は取れないようだ。

お気の毒なことである。そうでないのはポスターの貼りようで、秩父市内のどこにでも、これでもかというくらいすだれが貼ってある。かくして車内はウォーリーならぬすだれを探せ状態となる。遠目に近づくポスターあらば、元塾生元学生共に注目。


すだれと判明して車内爆笑。たまに違うのがあればもっと面白い。フォトショかけまくりのインチキ教団のや、中韓の回し者アカ政党のなど。アカって何でみんな同じ顔してるんすかね、とSくん。イヤああいう顔と銀縁眼鏡が、アカになるんだと九去堂。

車は谷川沿いをさかのぼり、正丸トンネルに近づく。抜ければそこは飯能市だ。すだれ氏の地盤は秩父ゆえ、これですだれ絵ともお別れだ。さらばすだれ、じゃなくて秩父。ところが抜けた先の陋屋に、ぺたりとすだれ絵が貼ってある。車内再度爆笑。


いやお見事なすだれっぷりと言うべきか。美事でないのはインチキ宗教同様に、フォトショばんばんかけてすだれを染め、濃くし、シワの類を取り除いていることか。それとも若い時のを使ったのか。いずれもインチキで、すだれであるには違いない。

今の方がいい顔と思うが。その執念に賛歌を捧げよう。

♪君~が~あ~頭(とう)~は~
千代に~いい八~千代に~
す~だ~れ~ 意思の~
巌~とな~りて~
苔の~ 蒸~す~ま~ああで~。

やがてすだれも尽きた頃、家並みが都市のそれとなる。飯能駅目指してぐるぐると、Sくん号が街を行く。空はカンカンといい天気。だが旅はここで終わってしまう。それでも夏が来れば思い出すことになろう。私は確かに、ひとときの昇天をしたのだ。

ありがとうSくん。また出かけようKくん。


昇天記、これにて完。

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