秩父昇天記(12)

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9時前、三峯神社の宿坊を出た。


宿オジさんたちに別れを告げて出た外は、昨日と打って変わっていい天気。日の光が眩しいほど。天候一つでこの森は、全く違ったけしきになる。テクテク歩むSくんKくんを呼び止めて、この九去堂はお札を求めた。さすがに萌え萌えのは無かったが。


参道を歩いていくとSくんがご覧なさいと言う。振り返ればヤマトタケルが、片手を挙げてこっちを見下ろしている。コレはどこかで見た構図、と思えばSくん、ナニ道場でしたっけと言う。ああ、あれはよしおか道場だ。思い出して共にゲラゲラ笑う。

©ほりのぶゆき


今日は晴れた遙拝所に登る。雲海も晴れてしまったが、遥か秩父の町まで見渡せる。登るはずだった奥宮も。ふと見るとSくん、家宝にしますとか言って、すっかり空になった徳利を手に提げている。入るかな、と我がパックを拡げたら何とか入った。


降りて今一度、この清々しい神域を振り返る。さらに参道を下ると博物館がある。丁度開いた頃合い、入ることにする。客は誰もおらず貸し切り状態。館オジさんが一人で番をしている。いくらかのお金を払い、お願いして荷物を入り口に置かせて貰う。


ロビーには、それはそれは大きなオオカミの剥製。たっぱのあるKくんよりもでかい。こんなのに襲われたらおしまいだよね、とこもごも話す。さらに進めば世界各地のオオカミの毛皮が、大事に退色しないよう保管されている。そしてゆかりの品々も。


ここ三峯の主祭神がイザナギ夫妻であるからには、もともとご神体はお山そのものと、住まうオオカミたちだったに違いない。より素直な自然崇拝と言えるかも。だからバチ当たりなこの九去堂にも、感じる所があるわけだ。昔の饗応に感心もする。


博物館を出てさらに下る。Sくん号が待っていた。ああ、いよいよ帰らなきゃいけないんだなァ~、と空を眺める。ここ数年、山よりは海を好んできた私だが。もともと巡ることの多かった山を見直す気分。無論まろうどとして訪れるからだがそれでもなお。


私が乗るのを待ってSくん車を出してくれた。これより前、部屋で今日どうしますと相談が。思い付くままダムと答えた。応じてSくん、うまいそばがあるという。いいねと応じればその場所を、Sくん知人に問い合わせ。すぐに返事が来たのには驚いた。


車はどんどんお山を下りていく。私は名残惜しく車窓を見送る。と、後ろにピタリと付ける車がある。Sくんもチラチラ監視している。私は用意の黒めがねを取り出して、できるだけ偉そうな姿勢で後部座席を占める。効果は?、どうせならの暇つぶし。


目指すダムが近づいた。しかしその水面はカラッカラ。ここ数日の大雨も、水瓶を満たすまでにはならなかったようだ。そういやあちこち節水ポスター貼ってありましたねとSくん。私は今まで断水給水の経験がないが。もしかしたらと心配にもなる。


ダムの駐車場で車を降りた。見ればわずかだが、放水している。ここでせき止めてしまったら、さらに下流が大変になるからか。世にはダム趣味の人もいると聞く。だがワシらはそうでないから想像するしかない。三人揃ってぼんやりと見つめる。


すでに二人は車に戻った。ここを立てばいよいよ下界。私は思う所あってあまりやらない自撮りをした。この素晴らしかった夏休みを忘れないために。我が若年の全国放浪の日々、あえてカメラを持ち歩かなかったことを、今になって残念にも思うから。

SくんKくん、文句一つ言わずに待ってくれていた。


これより、下界。

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