(7)


K君を乗せて三峯山上に向かう。
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雲間の青空に聳えるダム。いよいよ山岳路らしくなってくる。Sくん、昼飯食ったかとKくんに問う。済ませたようなことをKくん言う。それ以外はあまり口を開かぬ。男は黙っていた方がいいとされてきたが、車内でおのこ三人蒸していてもつまらない。
Sくんあれかね、Kくんはおしゃべり苦手かね、とこの九去堂が問う。そうでもないんですがね、といらえがある。しまった、これでは何かしゃべってワシを楽しませいと強要したことになる。人嫌いのこの私、存外こういう寂しがり方もすることがある。
話というのはお互い口をパクパクと、やりとりがあるから面白いので、一方的でいいなら芸がいる。それを噺という。だが壇上に立ったことがある私は過去を思う。噺も反応がないと実につまらん。お前らケンカ売ってんのかと言いたくなったことさえも。
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私より気が短いのに会ったことがないからでもあるが。ゆえに噺家稼業はもうやめた。それにS・Kくん共に客でもなければ雑民でもない。各々話したいように話したいことを話せば良かろう。だから車窓を楽しむことにした。またぞろ空が曇ってくる。
無論半世紀近く生きてきただけに、敷石を剥がすようにして会話を起こすことは出来もする。だがそれはシヤワセな結果につながらない。これは立場の上下に関係ないことで、その上二人と私の間に上下はない。楽しむためにここにいるのだ。
話して貰いたければ話したくなる我である他なく、話されっぱなしにうんざりしないためには、相手もまた私にとって有益である必要がある。要はケンカと同じで会話というのは、同程度の者同士でしか成り立たない。ケンカもやりとりであるからには。
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さてSくん道の駅で車を止め、モク休憩。店舗に入るも食指がそそらぬ。裏は渓流、本日は濁流となって川下る。こうしてみるとSくんは、堅陣突破の重戦車、Kくん偵察の快速戦車に見える。差し詰め私は呼べども出てこぬ、通商破壊の潜水艦か。
やや置いて車を出す。Sくんの指先、ライダー弁当なる看板が見える。本日休業らしいが、一体どんな弁当であろう。山一つ向こうの某町は、ライダーいらはいで町起こししようとしたが。見事失敗して今は廃墟が立ち並んでいるという。難しいものだ。
二つめのダムの上を行く。対岸に渡るとそこからは、三峯山への専用道。ロープウェイ廃止の現在では、時に8時間の渋滞があるという。つづら折りの山道を登る。ためしに窓を開けてみた。高度が上がって涼しく心地よい。前の二人も窓を開ける。
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木の香りの清々しさ。
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スギの香りが鼻をくすぐる。花粉だったら大変だが。針葉樹特有のいいにおい。
時折貫く日の光。
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後部座席から慌てて撮ったから、白い光線と青空も見えたことを補足したい。
直ちに沈む霧の森。
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これは中古カメラの感度の悪さが、却っていい効果になって現れたかも。
少しずつ高度が上がる。
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車窓の変化の激しさが、俗界から異世界への通過儀礼みたく思える。
見下ろせば視線遥か。
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霧に隠れた下界の姿が時折、キラキラと。うん、確かにここは天上界だ。
1550山頂駐車場着。
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Sくんおつかれでありました。

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