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俊寛陰謀の舞台、鹿ケ谷を背に、哲学の道のなれの果てを南下していくと、南禅寺に行き当たる。平日とて、地元の高校生が大勢マラソンに励む道を、琵琶湖疏水の支流が滝のような勢いで流れ下っている。傍らの野村美術館は休館中。
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天候は相変わらず降るような照るような、おおざっぱには霧雨だ。5度ほどの気温が一層寒く見える景色だが、風が無いのが助かりもする。本日体を覆う装甲はダウンのロングコート。箱根駅伝と笑われるが、歩きの旅には頼もしい装束だ。
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冬枯れた雑木林を抜けて横門から境内に入ると、閑散として一層冬らしく見える。
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本堂にはお定まりのちん像が祀ってあり、投げ銭箱の前から拝みもせず眺める。
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巨大なことで有名な山門。雨の勢いがやや激しくなる。
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その屋根の下で雨を防ぎながら、モンベルのレインコートで装甲を増加した。薄く軽い優れもの。反射テープを縫い付けた結果、これまたアメストリス軍と笑われるが、壊れた傘の布で裾を伸ばしてあるから、駅伝コートとの相性が良い。
s-WIN_20150108_113304.jpg アメストリス軍

©荒川弘

南禅寺については、これと言って思うところがない。ただポンニチの禅全般と、それにかぶれた西田を発端とする、今通ってきた哲学の道については感慨がある。
禅の修行は厳しいと言われる。しかし今の私には、それほどとも思えない。中世、禅は日本人に考える習慣を与えたが、同時に独善とキチガイの道を与えもした。今でも禅に凝って、騙される外人や頭がおかしくなる日本人の例は絶えない。
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また中世、京五山をはじめ禅寺群は、学問の中心でもあった。外交上必要な語学の拠点として、朝廷や幕府の保護を受けもした。しかし畏友天狗先生によると、その漢文読解はまことにいい加減で、外交を誤ったのではないかとも思われる。
あまつさえ権力者にちやほやされたのをいいことに、橋の真ん中で座禅を組むに至っては、思い上がりも甚だしいと言わねばならない。学問も人間性も、他と比較して自分の位置を確かめるという作業をしないから、このようなことになるのだ。
大燈国~1 大燈国~1
画像出典:wiki
それはまた、哲学の道の語源となった、西田哲学にも言えることだ。当人ら以外、誰にもわからぬ屁理屈としか思えないのだが、それを有難がったばか学者どもが、軍部のお先棒を担ぎ「近代の超克」とか騒いだことを記憶していてもいい。
当の西田キタロー自身、東条に頼まれると嬉しそうに、アジビラを書いていたりする。敗戦直前に死ぬとは、何とも命冥利な男だ。我は正しい、ゆえに正しいと言いつのる連中が、かくも大勢の人を苦しめたのだ。冥土でポパー卿に叱ってもらえ。
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「キタロー。これはきっと妖怪のしわざじゃ。」(前回上京時、太秦映画村にて)

…いかんいかん。だが、禅から学ぶことは、もうないのではないかと思いつつ、名物とうふ屋の並ぶ道を歩く。至れば立派な、琵琶湖疏水記念館が無償で公開中。
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宿年、琵琶湖の水を京の街へ引くことの悲願、それをかなえた近代の科学技術と、従事者の苦闘を解説している。その2階から眺めれば、疏水の終点。
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まじかの道をやや上がれば、疏水とインクライン、三条通が並んで伸びている。その向こうには日本初にして現役の実用発電所、蹴上水力のレンガ造りも見える。
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どうかすると陽が照りもする。台車上の舟と荷物は、最近復元されたものらしい。意外に確かなレールの硬さを靴底で感じつつ、科学と世代の何たるかを思う。
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水道が通り電気が照り、鉄輪が回れば景気はよくなり、人の腹は膨らむ。だが数理無き思い込みは、言い出す当人こそ水虫をかきむしるような快感を感じようが、それが流行れば大勢を不幸にした。やはり好事家の専業と止めるべきだろう。
疏水の設計者田辺朔郎は、西田の前年に世を去った。だが出生は10年早い幕末、高島秋帆の弟子の家だったから、観念論に刀を振り回す気違いを見て育っただろう。対して戦乱直後生まれの西田らや団塊には、どうも独善の池沼が多い。
やるなとは言えないが、日本人に哲学、いやもっと人文は向いていない。誰が向いているのかは知らないが、萌え萌えになりやすい連中は控えめにすべきではないか。近場のバス停を探してなれぬ街を右往左往しながら、そんなことを思った。

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