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京の東郊、南禅寺から琵琶湖疏水を通り、京都市街に向かって歩いていく。
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すると図らずも、山縣有朋の別荘、無鄰菴に出くわす。地図持ってないんだよね。
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中に入る。作庭が趣味だった山縣さんが、いちいち小うるさく指図して造らせたのだそうだ。しかし私には、造形芸術の素養が無いから、その巧拙はわからない。
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邸内には茶室、母屋、そして洋館の3つが建ててある。
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洋館の2階には、日露開戦を決めた歴史の舞台が残っている。
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さすがに当時第一の権勢家だけあって、その造りは凝っている。
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だがどうかすると、みすぼらしい茶室の方が金がかかっているかも知れない。金閣より銀閣の方がそうであるように、わびさびの不可解さはここにある。
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一通り見終えた後、母屋で抹茶を一服することにする。
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当日の気温は5度ほど。冷たい霧雨に凍えた体に、茶のほのかなぬくもりが心地よい。さらにはほかに人も無し。わからぬながらも心穏やかに、庭を眺める。
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そこへドタバタとちん入した団塊が、わざわざ私の視線に割り込んで居座る。
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やや興をそがれていると、庭の樹木について団塊何やら言う。その口調が横柄でなかったのは、当節珍しいことだ。
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気配で団塊を黙らせる。そそくさと出て行った座敷に静寂が戻ったから、屋敷の主について思いをはせる。
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山縣さんは生前も現在も人気が無い。後者については司馬さんが、悪口を書きすぎたのに一因があると思う。戦争でひどい目にあったからには無理からぬことだが、それでも彼なくして、日清日露の勝利も、先進国たる日本もないのは事実だ。
維新の元勲たちには珍しく、山縣さんにはオッチョコチョイなところがない。他の連中はその場のノリで、好き勝手に人を斬り殺したり付け火したり娘をかどわかしたりしている。あの西郷さんですらその気があり、伊藤さんなどはひどいものだ。

山縣有朋
出典:wiki

だがそのまじめさが、平沼騏一郎や上杉慎吉といったキチガイを、帝国政府の要職に引き上げることになった。二言目には神国日本などと言い出すこの手の試験秀才キチガイが、日本国中を焼け野原にする結果になったのだからたちが悪い。
要するに山縣さんは、キチガイに金箔を付けてしまうほどまじめ過ぎたのだ。サークルのノリでお調子者ばかりの藩閥政府で、大久保亡き後はほかに人がいなかった。それはそれでうまくいったのは歴史の奇跡で、ツケは後代に回ったわけだ。
そのエラい山縣さんを、明治になってからさんざんいびった、無位無官の男がいたのは面白い。山縣さんがエラくなった元ネタである、吉田松陰の兄弟子、白井小助だ。数少ない画像を探せば、なるほど、イジワルじいさんの顔をしている。
白井小助
出典:http://www.yanaicci.or.jp/yanai/person/shirai-s.html

小助は山縣さんの屋敷に暴れ込むと、まず平ぐものように頭を下げさせ、上座に上がって酒を飲ませろとわめき、夫人を酒樽に放り込んで、「伯爵夫人を漬けたらどんな味がするか」とヒシャクを酌んだ、そう司馬さんが面白がって書いている。
その極めつけがこの便所だ。
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小助は伯爵夫人を呼びつけ、ワシのシリを拭け、と命じたらしい。さすがに夫人が怒ると、頼む、頼むから白井先生の機嫌を損ねないでくれと、山縣さんは夫人を拝み倒したとある。もっともこの便所でではあるまいが、大いに興はそそられる。
並ぶ者無き権勢家であれば、無礼者と牢にブチ込んでしまっても良かったはずだ。まじめだからこそ、師の兄弟子という義理に絡まれるし、与謝野晶子にイヤガラセを書かれても、いじめもせねば不出来な旦那を前線に引っ張りもしなかった。
憲兵をうろつかせて人の口を閉ざし、気に入らねば前線に追いやった東条も、まじめであることには違いがない。平沼や上杉もそうであろう。問題はまじめかどうかではない、人を左右できる者に要るのは有能さだ、と確信して無鄰菴を出た。
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