(33):湖畔静泉


阿寒湖畔のキャン場にいる。今夜は北海道の地上で過ごす最後の夜だ。
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ずいぶんと広いキャン場だが、今日見えるのは私のほか2張り程度。1つはF君のだろうが、もう1つのキャンパーとは結局、最後まで没交渉。
さて私は火付けが好きである。その道具をここ北海道まで持ってきたというのに、まだ一度も火を上げていない。ゆえに今宵こそはと思うし、やがてやってくるであろうF君を迎えるにも、赤々とした火はまことにふさわしい。
というわけでいつも通り、しけモク拾いみたいに火ばさみを持ち、バケツ片手に薪取りのおきなと化し、キャン場内を歩き回る。が、例によって湿気っている上に燃えにくい樹種ばっかりで、ぜんぜん集まらない。
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しゃーねーな、とふと首を回すと、物置小屋の後ろに廃材がいくつか転がっている。コレヨコレヨと喜んで、元は看板だったであろうその廃材に蹴りを入れ突きをかましねじり上げ、バキボキとぶちこわす。図らずも北海道木人拳だ。
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※右画像出典:http://xxxkaigaixxx.blog.fc2.com/blog-entry-54.html
対クマ用武器兼火付け道具の、ナタを取り出してかんかんと割る。この廃材、燃えやすい樹種と見えるのはよいのだが、ふる釘がところどころに刺さっていてまことに割りにくい。三度に一度は、蹴らずばなるまい。果ては工具箱から金槌を取り出して、ナタの背中を叩きもする。かくして格闘することおおむね20分、なんとか焚き火に十分な量の薪と、火付け用のチップを得た。
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ふ~。薪割りで汗をかいてしまった。とそこへ、ドコドコとハーレーの音がする。騎り手は同年代ぐらいか、名古屋から来たGさんである。Gさん私からは遠巻きにして、高級そうなテントを張る。
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それを眺めやりつつ、汗を流しに湯に出かける。内陸にある北海道の湖はたいがい火山湖で、それゆえ温泉が湧くからお風呂には困らない。F君によれば共同湯もあると言っていたことが、ここ阿寒湖畔に来た理由の一つでもある。
それなるまりも湯へ馬を駆って到着、まずは洗濯。
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湯はおじいさんがひとりで番をしている。まことにひなびた共同湯で、私には好ましいお風呂の雰囲気だが、こうした施設もいつまで持つやら。
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洗濯機を回してそろりと湯に入る。相客はおらず、貸し切り状態。浴室にはおじいさんの工夫であろう、木で作ったまりもちゃんが、お風呂の道具として置いてある。
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けしからぬバカ者がいるものだ。おじいさんの心づくしを盗んでどうしようというのか。
まりもちゃんと戯れつつ湯を堪能する。
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熱すぎず冷たからず。無色無臭の湯が、シックなタイルに映えてまことに気持ちがよい。
ふ~、良い湯だったと上がれば、北ライダーには定番のガラナが。一本いっときましょう。
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グビグビやりながら見回すと、やたらとお説教臭い掛け物置き物がある。
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ま、ありそうなことではあるが数が多すぎる。何かご信心ですか、とおじいさんに聞けば、熱心なお客さんが1人いて、やたらと置いていくらしい。あんりまぁ。
洗濯機はまだ回っている。一服点けようと入り口を通れば、Gさんがおじいさんと熱心に会話中だった。
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阿寒湖の日没を見やる。
もう、帰るんだな~、と独りしみじみする。
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湖畔はホテルやら土産もの屋やらがならんでいる。しかし半ばシャッター通りと化している。寂しいことだと思っていると、観光船からおかに上がったチュコクチンが、わらわらと通りを歩いてくる。
1軒だけ開けていた店の中を徘徊しながらものを思う。地方の観光地は既に、チュコクチンなしでは立ちゆかなくなっている。現にこの私も、土産もの屋を物色しながら何一つ買わない。カネがないわけではなく、その気になるものが何もないのだ。対して若いチュコクチン、カップルでうれしそうに物色し、なにがしかを買っていく。
首を振り振りまりも湯に戻る。洗濯物を引き取って、乗騎と共にねぐらへ戻る。

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