(26):山上君子

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ごぉぉぉぉぉぉ。
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9/5の午前10時、私は函岳山頂の、人ト気のない山小屋にいる。オホーツクから西へと駆け上る雲と風に、外に出る気が起きない。
とはいえ山の天気、時折雲の切れ目からは真っ青な空がのぞいたりして、まことに変転きわまりない。
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さて、どうするね、と考えていた時、タタタとOFF車がやってくる音がした。明るい色の馬に騎り、陸自の官品とおぼしき迷彩服を着たそのライダーが、私のいる山小屋に入ってメットを取ると、やさしげな顔をしたおじさまであった。お名前をKさんとおっしゃり、防空隊においでという。
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なるほどここ函岳周辺は、全国でも屈指の、陸自部隊が多いところらしい。外でごうごうとうなる風音を聞きながら、お話を伺う。
お店のバイク仲間である、戦車学校教官どのをはじめ、私のまわりの陸自さんには、やさしく強い武人が多い。20年以上前のことになるが、北海道のとある駐屯地の傍らをバイクで通りかかった際、展示の61式戦車を柵の外から撮っていたら、営門からわらわらと隊員さんが出てきてびっくりしたことがある。
201311192016507192.jpg 61式戦車
右画像出典:wiki
あー、まずかったかな-、と逃げ支度をしていると、どうぞどうぞ中で、と手を取られ、戦車に上がらせてもらい、一枚撮って頂いた記憶もある。いまその写真が見つからないのが何とも残念だ。
もうすぐ定年です、とKさんおっしゃる。内地からこの地に赴任したKさん、退官後もずっとここで過ごすおつもりとか。よほどお気に入られたのだろう。函岳もその一つで、今日は非番だから、少し様子を見に行こうと来られたと言う。
Kさんはお勤めの傍ら、地元のスキー学校の校長先生でもあって、今HPを見れば、子供たちを中心に、熱心に教えておられるように拝察する。偉い先生だ*。得た技を小さき者に伝えようとは、何とも頭が下がる。私はスキー靴を履いたこともないが、教わるならこうした先生に教わりたい。
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それにしても天候は回復しそうにない。とそこへ、美深町のロードパトロールがやってきた。
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町職員の方はKさんとはなじみらしく、言葉を交わしている。どうもいけないようで、正午には函岳への道を閉めるという。まだ時間ありますからね、山の天気ですから、それまでゆっくり待っていかれるとよいですよ、とKさんおっしゃる。
お言葉に甘えさせて頂いて、昼まで粘ることにする。Kさんはパトロールのトラックと相前後して、山を下りていった。
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私ごときが手練れのKさんにヘンだが、どうぞご安全に。
ただ今1030ちょい前。山頂は歩いてすぐそばにある。天気はぜんぜん良くならない。
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ゆえにラーメンなどすすりつつ、Kさんのお言葉通りゆっくりしてみる。
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11時をまわる。もうそろそろ限界だろう。外に出てみると、ぶんぶん飛んでく雲の下に、オホーツクの町並みがキラリと見えた。
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意を決してザクザクと歩き出す。山頂レーダーへの道を遮る横木を回ると、その地面に異なものを見つける。
うはー、熊の糞じゃー!!。

熊出没注意
   ∩___∩
   | ノ      ヽ
  /  ●   ● | クマ──!!
  |    ( _●_)  ミ
 彡、   |∪|  、`\
/ __  ヽノ /´>  )
(___)   / (_/
 |       /
 |  /\ \
 | / ●  )  )
 ∪ ● (  \
 ●●    \_)

事前の情報から函岳には、出る、と聞いていた。私はいっぴきの生物として、ここはオレのシマだ、入ってくるなよ、と警告されたことになる。出るを知ってはいたから一応その覚悟と、山刀をぶら下げてはいる。しかし見ちまったからにはやはりビビる。暴熊馮河する元気は私にはない。熊ァ相手に、ケンカのしようなぞあるかい。こりゃあ頂きを見るなら見るで、山おやじの邪魔にならぬよう、さっさと済ませにゃ、と足を速めた。
しかしよろばうように山頂に上がる。画面が揺れているのは足ガクガクなのではなく、ものすごい風に吹き飛ばされそうになっているのだ。


山頂を示す柱にしがみつきつつ、なんとか記念の写真を撮った。平家ガニ見たように顔が引きつっているのもまた、狂風のしわざである。
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ここ函岳山頂は、360度の大パノラマをうたわれている。天候ゆえ利尻礼文、オホーツクの海は望みがたいが、しかしその景色たるや、神々しいとは言うも愚かなり。
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退散するように山頂を下り、がさごそと荷をまとめて馬に積む。1120過ぎ、函岳を去った。
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帰りは下り勾配だから、スタンド姿勢で下りていく。さすがはセロー、馬の自然な動きを損なわないよう気を付ければ、のぼりでの難所も難なく踏み越えた。
美深歌登大規模林道との分岐では、町職員の方が番を張っていた。
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シートを倒して半ばお昼寝中のところへ声を掛け、もう上には誰もいません、と伝える。
あとは快調に下っていく。
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さよなら、函岳。また来るぞ!
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今度は素晴らしい景色、いやそれとも満面の星か…。
そろそろ国道に至るとおぼしき頃合い、ふうと一服点けたくなって馬を止める。右手遠くには大きな農家があるが、そこからなにやら音がする。
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わんわん。わんわんわんわん。
怪しい奴が来たというので、忠実無比なる番犬が、かなたから私に吠えかかっていたのであった。
馬へのダメージで、ややへこんでいるワタクシ。その上雑いぬどもにも吠えられる。
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犬じゃ、いぬじゃ。いぬライダーじゃ**。はは。とりあえず、南下して名寄のまちで休もう。
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*:人生の上で、偉い先生に出会った経験があるとないとでは、その豊かさがまるで違う。
**これでカンベンしてもらえませんか、奥様。

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