(13):追憶麗泉


野付の漁協にいる。

ここでは、普段お世話になっている方々へ、直送でホタテを送るのだ。ここのホタテは内地で見られるそれと違い、びっくりしたなもう、というくらいデカい。そしてクリーミーでうまいのだ。自分用にも1袋発注し、加えて今夜のつまみに柔らかく干したのも買う。
総額¥14,580。何事につけひとり食いは良くない、こういう散財はするものだ。
それやこれやを終えてキャン場に向かう。漁協からは5分ほど。

受付を済ませてテン場を見回る。お客のほとんどはバンガロー利用らしく、テントの姿はほとんど見えない。出来るだけ端っこに端っこに、と探せば、別枠とおぼしきテン場があって、そこ専用のトイレもある。1つテントが立ってはいるが、どうやら貸し出し用の常設テントらしく、無人。
うむ、広いテン場を独り占めじゃあ。
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テン張りを終えて管理棟に向かう。コインランドリーがあるのをチラと見たからだ。洗濯物を持って放り込み、がらんがらんと回す。
料金も良心的。
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回している間、休憩所のわきにあった本棚を見る。いろいろと時間つぶしの本がある。この手の施設にはよくあることだが、内容は旅の本、自然の本、そして重~い目の小説だ。いくつかぱらぱらめくってみたが、どうも引っかかりがあるのでやめにする。ふと見れば手塚先生の『どろろ』があったので、それを読みつつ時間をつぶす。やはり重い目の作品であるには違いない。
GPSの記録によれば、このキャン場についたのは1620ごろ、そして2時間近く、動かず時間を過ごしている。テント設営と薪拾い、それと洗濯だけで、そんなに時間かかったかしら、と今不思議に思う。どうも野付では、私の時間感覚が狂うらしい。そしてそれは翌朝まで…。
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1820ごろ、野付の温泉・浜の湯に向かう。
が、どうもその場がわからない。漁協近くだという見当は付いていたのだが、走り回ってもわからない。
あきらめてセイコマに入り、ビールとタバコ買いがてら、レジのお姉ちゃんに聞く。いまいち要領がわからないらしい。そこへ地元のおいちゃんが口を挟む。あそこねー、わかりにくいんだよ。さらにはおばちゃんも口を挟む。行き方は2つあってね、1つは神社の手前を下に回って…と、詳しく場所を教えてくれた。
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旅人がうろうろしている北海道の、さらに海浜のまちならではだ。誰も行きたがらない内地の寒村では、こうはいかないものである。
おかげで無事到着。なるほど、先ほどうろうろした道沿いではあるが、ずいぶんと入ったところにある。
装束一式を脱いで風呂場に入る。
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おや…この光景は。
標津YHデジャブーではないことはのちにわかる。初めて馬で北海道に渡った大学3年の夏、確かに私は野付で泊まっている。当時はまだあった標津町YHが宿だが、風呂は外湯と、この温泉に向かったのだ。
その時連れ立ったのは同宿の2人、レンタカーで北海道旅行中のK塾生だった。おお! Kの方ですかと私が言い、おお、Wの方ですねと言われた記憶がある。翌朝、共にトドワラに向かった記憶もあるが、定めし今は、立派なビジネスマンになっているのだろう。幸多かれ。
さて風呂場に入ってゆっくりしていると、おじじが一人入ってくる。私は浴槽から上がり、体でも洗いましょうかねと蛇口をひねる。ところがその調節がうまくいかない。あれこれいじっていると、おじじが話しかけてくる。それね~、おかしいでしょ。
おじじは地元の漁師という。問われるままに旅の話をする。ここの魚がおいしくて、忘れられずにまた来ました。おじじも話に乗ってきて、北海道各地の魚介の品評、それらの旬を教えてくれる。ぜひともその旬に注文します、と答えて、しばらく話を続ける。
すっかりいい心持ちになって湯を上がる。その証拠はこの画像。
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私には、甘い飲料を飲む習慣がない。しかしこの日は1本、コーラをやろう。いまどき瓶詰めで、ぽんと栓を開けて飲むことなど珍しいではないか。
フロントにはおかみさんが座っている。デジャブーではないことを確かめようと記憶を話すと、確かにその通りという。今はYHも更地になっちゃったんですがね、それにしても今年はおかしい、ずっと雨だし、釧路でマグロが上がったり。野付もどうなるやら、と心配そうだ。
1920ごろ、また、来ます、とおかみさんに挨拶して湯をあとにし、キャン場に戻る。
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無論もう真っ暗だ。
早速いつものお楽しみ、火付けと行く。
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ところがぜんぜん燃えてくれない。カバノキ系統である上、連日の雨で湿っているからだ。下からバーナでごうごうやるが、ガスの火力では何ともならない。
あきらめて普通にバーナで湯を沸かす。
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兵庫さんに同感、チリトマトってうまいよね~。
食し終わってテントを閉じ、ラジオを点け、のんびりと一杯始める。
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いつ寝たかは記憶が定かでない。暑からず寒からず、静かな湖畔のキャン場で、満ち足りた時を過ごした。
(本日の走行:271.6km)

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