(26):最後にイベント

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9/10。徳島から東京に向かう、おーしゃんいーすと号で目が覚めたのは、東京湾に入ってからだった。
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このいーすとと、うえすとの東西姉妹だけでなく、南北姉妹も、このトランスオーシャンフェリーには、他のフェリーには珍しい、ある特徴がある。それは、船客の入れる回廊がブリッジ下まで伸びており、進んでいく前が見られることだ。
ツアイス首から下げて前方に立てば、気分は航海士。
約二週間ぶりに、ゲートブリッジと再会。
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東京港は、もうすぐ目の前だ。
いよいよ接岸、と思っていたら…
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あれれ? 引き返しちゃったぞ?
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ここで船内放送が入る。
船首のスラスター*に故障があり、もう一度接岸を試みつつ、今懸命に修理しているという。
その通り、もう一度トライしたがやはり接岸できなかった。さらに放送があり、修理を進めつつ、出来ない場合に備えてタグボートを手配したという。このため接岸は、2時間ほど遅れるとのこと。
うっほほ~い。こりゃ面白い。別に急ぐわけではない私は喜んだ。


*スラスター:カニのように船を横移動させるために、船首などに付いている横向きのスクリュー。こんなの。

(画像はwikiより)


こんな時は、まずのんびりしよう。と言うわけで浴室にドボン。
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同じ事を考える酔狂な人はいないと見え、朝湯を独占して満喫。
風呂を出てみると、船は東京港を一旦出て、湾内を遊弋中だった。
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ロビーでは初老の船員さんが、遅れについて船客に説明している。肩章のスジは3本だったから副長格、多分事務長だろう。
トラックの運ちゃんは、まぁしょうがねぇなぁと鷹揚に答え、他の船客もおおむね同様。こんな時に良く出る、高い周波数でキャンキャンわめくのがいないのは助かる。
事務長さんは私にも、申し訳ないと謝る。いえいえ、おかげでたっぷりと朝湯を楽しめます、あっはっはと笑って答える。人と人とのねじれのモトは、茶にして笑ってしまうのが一番だ。ていうかワシ、この状況楽しんでるし。
しばらくこの事務長さんと雑談する。話を聞くだに、長距離フェリーの置かれた、厳しい状況が良く知れる。長距離の物流と言えばトレーラーの荷だが、それを運ぶ船の主流はすでにRO-RO船であって、それと競争しなきゃいけないと言う。
RO-RO船は構造的にフェリーと同じだが、船客を乗せないからその設備がいらない。これで勝つのは難しかろう。
ワシらバイク乗りには、フェリーが無くなると困ります、と私は言う。バイクのお客さん集めるにはどうしたらいいですかね、と事務長さんも言う。う~む、そりゃ運賃値下げが一番だろうが、それでは対策にはなるまい。そうですね、ブーツ・メット置き場が車両甲板にあれば喜びます、と答えると、そうですね、船造る時に、最初っからそうすべきですね、と事務長さん答える。船の建造費というのは、細々とした艤装が付くどうこうでは、変わらないのだそうだ。
そうこうするうちに、船は再び東京港に入り…
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タグボートがやってきた。
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周囲に大きなタイヤをいくつもぶら下げて、誇らしげに「俺はやるゾー!!」と言っているかのようだ。
ブリッジの屋上には、赤い放水銃も付いている。万一の時は消火作業にも当たるのだろうが、まことに頼もしい。
タグボートというのは、どうやら1人で操船するものらしい。
すっくと立ち上がった背の高いブリッジは、周囲をガラスで囲われ、周りがよく見えるようになっている。その真ん中に操舵席があり、船長が一人で操っている。その様は船と言うより、重機を思わせる。
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ボートは巧みな舵取りで、船首・真ん中・船尾と、次々にとりつく場所を変えながら、11,523総トンのいーすと号を、岸壁に向けてそろそろと押していく。
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波しぶきの音、エンジンの音、なかなか迫力のある風景だ。
それにしても、いーすと号は今後ドック入りするまで、東京・徳島・北九州と、3つの港でタグボートのお世話にならなきゃいけない。手配料がいくらかは知りかねるが、船会社にとって予期せぬ負担なのは間違いない。私がするとは余計な心配だが、この航路が残ってくれるのだろうかと不安にはなった。
なお帰宅後、オーシャントランスのHPを見てみたが、この日の夕刻も、無事いーすと号は東京港を立っていったらしい。修理が成功したのか、それともやはりボートのお世話になったのか。
さてボートの奮戦よろしきを得て、おおむね0730、いーすと号は東京港に着岸した。
荷を担いで車両甲板へ。メイト君にくくりつけられたロープを外し、メットかぶって発進準備をしていると…。
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トンカントンカンと、鉄の階段にK靴?の足音高く、若者の集団が続々と甲板に降りてきた。
昨日の装いとは打って変わって、まるで南方に出征する帝国陸軍が、途中で紺屋をくぐってきたような格好をしている。
そりゃもう続々と、降りてくる、降りてくる、降りてくる。
若者は車に至るとその一人が乗り込み、もう一人が前に立って、ウインカー良し、ライト良し、と確認していく。
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話を聞けばこの若者たち、これから福島に向かうのだという。
それはご苦労様です…と、頭を下げた。多分全国のこうした若者たちが、交代で原発のKBに当たっているのだろう。
メイト君たちとは反対側のゲートが開いた。
まずは若者たちの乗った車両群が、次々に船を下りていく。
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その後に続いて、私とメイト君も船を降りた。
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しばらく集団に挟まれるようにして港から進んでいく。
やがて彼らは、高速から福島向けて入っていった。どうぞご安全に。
主従のみとなった私とメイト君、朝の東京を一路、陋宅に向かう。
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何ら障害もなく、1時間弱で帰宅。
見ればメイト君のオドは、ちょうど8000kmだった。
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旅は、終わった。
良く、走った。
いや私がじゃない、メイト君がである。
1000kmを超える道のりを、山越え谷越え海も越え、雨に打たれてもびくともせぬ。
荷の積み過ぎは多少文句を言うが、それでも少々の過負荷は何でもない。
騎り手を疲れさせず道も選ばず、何より小食でお金がかからない。
爆撃機も良い、戦闘機も良い、攻撃機も良い。
しかし子馬メイト君もまた、最高の乗騎である。
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四国放浪記

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