(26)


シンガポールの朝6時前。タクシーで宿を立つ。
行きと同じ、高速道路を通って今度は逆に向かう。景色ばかりは行きと同様、まだ真っ暗だ。遠くの港の灯りと、道路脇の集団住宅のみが、ぽつぽつと点っているだけ。

チャンギ空港に着く。すでに朝便の出発ラッシュなのか、ターミナル脇には延々とタクシーの列が並ぶ。
日航のカウンターに行ってチェックイン、荷物を預ける。
チャンギ空港は動線の設計がよいのか、むやみに歩き回る必要がない。これはターミナルごとにコンパクトだ、ということかも知れず、それはどことなく、シドニー空港を思い出させる作りだ。
ただ、何事にものんびりとしているオージー達と違って、その後の手続きにはこんな配慮も。

これは国内税の免税受付機。シドニーだと、カウンターはどこだとあちこち探したあげく、行列に並んで税関のお兄ちゃんお姉ちゃんと、慣れない英語でやりとりせねばならないが、チャンギ空港ではピッポッパで済んでしまう。さすがだ。
さて出国手続きを済ませて通ると、お決まりのセキュリティーチェックがない。あれおかしいな、後進国とかギリシャの連中と違って、決まり事はきちんとするのがシンガポールの役人というものなのに。どうすんだろ、と思いつつ、免税店でタバコなどを買う。
私は無論タバコのみだが、友人にもタバコをたしなむ者は多い。
そうした人々への土産は、なんと言ってもハバナが一番だ!

ほかに自分用のチュコク製タバコなどを買い、これですっかり、現地のお金は使い尽くした。
ずるをしてラウンジに入る。

ま、コネで入ってるのだから偉そうなことは一切言えないが、ヒースローや成田に比べると貧弱ですねぇ。というか、それらの空港がよくできすぎてると言うべきか。ヒースローのインドカレーなんざ、そりゃもう絶品ですよ。
とはいえ、ここチャンギ空港もまんざらではない。地元のビールは飲み放題だし、このチキンライスはたいそうおいしかった。実のところ、このチキンライスが、シンガポールで食った一番うまい食べ物と私は断言しちゃおう。
どうやらセキュリティがあの様子だから、こりゃいけそうだってんで、ずた袋にビールを何本か、ちょいちょいと入れる。それをかついで、さて喫煙所はと見ると、外に出て行けということであった。

朝まだ明け切らぬ空の元、みれば私のようなおっさん連中が、三々五々煙を呑み吐きしている。館内と違って生ぬる~い常春の空気の中で、ぼんやりと離陸の時を待った。
さて乗りなさいとアナウンスがあったので、ゲートに向かう。
あやや、セキュリティはゲートごとか! まとめてやっちゃう成田なんぞより、よっぽど厳しい。
無論ビールは見つかってしまい、どうするかね、とマレー系のセキュリティのおっちゃん言うので、地元タイガービールだけ取り出し、後は放棄。
んでおもむろにタイガーの飲み口を切り、指で「To heaven, to the earth!」とひとしずくづつはねる。ようやく顔を出したお天道様に一礼、シンガポールに、乾杯! と、ごくごくその場で一気飲みした。

ほぼ、定刻通り、B767は離陸した。
もう来ることはないだろうが、まろうどとしてやってくるならシンガポールはいいところだ。
さようなら。


キラキラとマレー半島の景色が見える。北上しているわけだから、半島を突っ切って767は行くわけだ。
機内食は行きより豪華。見たかった『戦火の馬』などを見つつ、いつの間にか眠ってしまった。
それにしてもこの映画、行きには英語版と中国語版しかなかったのに、帰りは日本語吹き替え・字幕がちゃんとある。更新したばかりなのかな?
さてこれもほぼ定刻通り、成田着。
入国も税関もスムーズに通り過ぎ、外に出る。
あ、やっぱまだ寒いは。
行っちゃったばかりの京成本線特急を逃し、1時間以上待って、スカイアクセス経由で帰る。
-----—
シンガポールは、実験国家だ。
悪条件からなんとか生き延びるタネを探し、それを最大限効率化しようとする、一つの試みである。
それは今日成功していると私は見たが、日本と似ているところ、似ていないところ、それぞれを通して、自分の住む社会というものに考えが及んだ。
やるなら、やりきらねばならないのではないか。
そうはいっても、小さな国でなければ、やりきることは出来ないのではないか。
それがシンガポールと日本との間に見た、私の対比である。
おつきあいありがとうございました。
(完)

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