昭南島往還記(4)

シンガポールのチャンギ空港は、成田やヒースローと遜色ない大空港なのだが、歩き回る分にはコンパクトに思える。飛行機を降りてつかつかと歩いていくと、手際のいい審査官がスタンプをさっさと済ませ、長々と並ぶ必要がない。これは、早朝であったために違いない。

到着ロビーに出るまえに、恒例の税関を通らねばならないが、それらしきブースもなく役人も並んでいない。成田の、いかにもお上に恐れ入れと言うようなあの税関と小役人の詰め合わせとは、えらい違いである。

見れば出口近くに荷物を通す検査機が1つだけあり、よく肌の焼けた役人が一人、白人の手荷物をチェックしていたが、私を見ると「シガレ?」とたばこを吸うマネをする。No.と答えればそのままドアを指さした。なんだかあっけない。

まずは両替を済ませる。英語が出来ないから中国語で意志を伝えたが、そのくせ取り出したのが日本円とあって、両替屋の姉ちゃんたちがおもしろがっていた。ついでに案内嬢に電話はどこだと中国語で聞くと、すぐさま教えてくれる。

電話をかけタクシーに乗る。シンガポールはタクシー料金が安く、気軽に使えるのがありがたい。このとき乗った運ちゃんは華人のようで、ここでも中国語で用を済ませた。やはり中国語を使う日本人は珍しいらしく、ようこそいらっしゃいみたいなことを英語で言う。

一路中心街に向かって高速を飛ばす。

ここで気がついたのだが、中国語と言ってもシンガポールの言葉は北京語ではない。いわゆる華南方言というやつで、私の北京語は相手に通じるが、相手の言葉はかなり分かりづらい。こりゃあ仕方なく中国語を引っ込めて、苦手な英語でやりとりせにゃならんかなぁとやや覚悟する。

現地時間の7時、宿の前に着いた。この運ちゃん、おつりを払わず懐にしまう。う~むなめられたかな? ここはチップ無用の国だと聞いていたのに。

とりあえず寝ることにする。船でも汽車でも同様だが、乗り物の中で寝るというのは、熟睡したああすっきり、というわけにはやはりいかない。とはいえすぐには寝付けず、そう言えばなんだか体調もよろしくないような気がする。当たり前だ、飛行機の中でジョニ黒半分も空けちまう私が悪い。

そうこうするうち夜が明ける。

ニコチンも切れたから買いにも行きたい。ロビーに降りてたばこ屋はどこだと英語で聞くと、マイルドセブンでいいか、持ってきてやるからここで待てと言う。しばらく待って支払おうとすると、おつりがないという。じゃカードでどうだというとこれもダメ。結局チェックアウトの時のまとめ払いと言うことで話が付いた。んでレシートを見ると、あとで分かったことだがマージンなし。おや、まじめだねぇ。

外に出て喫煙所で一服点ける。見回すとここは本当に高層建築の多いところだ。宿もその例外ではなく、まさに摩天楼という言葉がふさわしい。

すぐ近くにはスマトラという、世界有数の地震地帯があるのに、こんな建物ばかりで大丈夫か知らん。さらに頭を巡らせば、遠くに最近出来たという、空飛ぶフランスパンが見える。

手前に見えるのは戦争の記念碑だそうで、なんでも日本政府がすまなんだ踊りを踊りながら建ててやったという。
部屋に戻って一寝入り。起きたらおもむろに、ちょうどお昼前の街を見下ろす。

ふと見ると、遠くに赤い旗がへんぽんと翻っている。定めしゆかりの深いチュコクの大使館かと思いきや、取り出したニコン君で眺めたらコワいおじさんのところだった。

今回連れてったニコンのミクロン君と、20世紀の世界で一番顔がコワいおじさん。
このビノはまさに手乗りビノ。ライトウェイト故にビノもコンパクトに、というわけで。

そろそろ行動開始だ。さて、どこに行こうか?

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