昭南島往還記(0)

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今回はゆえあって、旅の起こりをここに記すことが出来ない。ただそれは、宝くじや福引きに当たったような幸運がきっかけだと言えるのみである。さもなくば、私のような貧乏人が、ほいほいと海外へ出かけられるわけがない。

以上の事情から、この旅は特殊なものにならざるを得ない。その1つは、荷物を極端に減らさねばならないことだ。なぜなら渡航先の空港に着いたら直ちに、宿へ向かわねばならないからだ。いつ出てくるか分からない受託手荷物を、待っているわけにはいかないのだ。

とはいえ、それはそれでよいことだ。ライトウェイトこそ旅の秘訣であり、余計なものを持ち歩かないからこそ、紛失や盗難破損のリスクを減らせるというものである。1点だけ不安があるとすれば、それはマルチツールのたぐいを持って行けないことだろう。ナイフを機内に持ち込むことは出来ないからだ。

ただ、渡航先はまともな国だから、ビクトリノックスくらいは現地で手に入るだろう。入らなかったら、なんとかするのみだ。

あとは何か問題が? そうそう、機内持ち込み手荷物最大サイズの、キャリーバッグが必要である。ネットで検索すればいろいろと出てくるが、売り手が持ち込み可能と言っていても、それが本当であるという保証はない。ゆえにJALのページを確認しつつ、計算尺片手に商品を選ぶ。

ただし計算尺では加減算は出来ないから、結局電卓のご登場となる。JALの指定は縦横幅のそれぞれの最大値、および三者の合計の最大値だからだ。化学工場で成分の最適解を求める技術者のように、見つかった品物ごとに計算を繰り返す。

幸いにも良品が見つかった。それも色が不人気と見えて、その色だけが投げ売りされていた品である。あと必要なのは…そうそう、デジカメ君の電池である。

私が使っているデジカメは2つあり、1つは工事現場用のリコーカプリオ、投げても落としても池にドボンしても大丈夫な装甲カメラである。実際小笠原で、泳ぎながら海中の動画を撮っててサメに出くわして、びっくり仰天したことがある。


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14秒あたりで左手に見える大岩の底で、先生寝ておいでになった。今よく見りゃ、動画冒頭の右手で、悠然と泳いでらっしゃるのにね。その後画面がひっくり返ってゆるゆると陸に進んでいくが、当人はびびりまくって、これでも必死こいて泳いでいるのである。
なおサメの先生は、水面でぱちゃぱちゃやってるのを見ると突っつく習性があるから、こういう逃げ方はやめましょう。
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も1つはカシオのEXLIM、それもずいぶんと古いタイプのEX-M2だ。光学ズームもないこのカメラだが、それだけに立ち上がりとシャッターの落ちが素早く、今だにこの速度で動くデジカメはないらしい。

かさばるカプリオ君を持って行くわけにはいかないから、今回はこのカシオ君を連れて行こう。ただし生きてる電池が1個しか無いから、これまたネット最安値で2個買う。
あと必要なのはガイドのたぐいだろう。定番の『地球の転び方』最新版を買う。古くてもいいようなものだが、やはり情報は最新がいい。

現地に何度か行っている知人によると、シンガポール(以下、昭南島とする)では中国語が通じるという。それなら安心だが、私の中国語はさび付いてもいるので、旅の中国語会話集を念のため買っておいた。

そうこうするうちに注文したケースが届く。巻き尺で再度サイズをチェックしていると、わずかに高さがオーバーしている。仕方なく改造することとし、上面の取っ手を外してサイズに収める。これは実のところ杞憂だったが、こうしていじくるのもまた面白い。

さて、あとは情報をネットで集めるだけだ。知人によれば昭南島は小さいから、2,3日もあれば全部回れるという。手引き書や様々なサイトを見ていると、どうやら本当にそうらしい。

特に私は、そうした情報のたぐいのやや半分を占める、買い物と食い物の話には全く興味がないから、どこ行こうかと苦心してしまうほどだ。日本でも買えるようなもの食えるようなものに、わざわざ海外で金払う必要がどこにある? 荷物も増えるし腹がたるむじゃないか。

そんなこんなでいくつか訪れたいポイントを選び、中華圏の先達であるS君に評をお願いする。

悪くないんじゃないですかと合格点をもらったから、こたびの旅は幸先がよい。ただし現地の名物チキンライスは食べてって下さいねとS君言う。そんなこんなであっという間に日は過ぎ、ケースに衣類詰めるやら救急セットからちっちゃいビクトリノックス外すやらして、当日を迎える。

私が普段旅に出るときには、救急セットはそこそこ大がかりなものを持って行く。しかしこたびはライトウェイトだから、内容を精選せざるを得ない。ところが冒頭の事情により、怪我病気トラブルのたぐいは一切ご停止(ちょうじ)だから、何が起こっても全部自分の手で処理できねばならない。ゆえにセットの中身は、ワセリン、駆風油、正露丸、六神丸、ハイドロコロイドと、三角巾毛抜きもぐさ、セット外としてお灸のツボの手引き書のみとなる。

ただ現地が南洋の島であることを考えると、虫類・は虫類の攻撃もあり得るから、毒吸い出しキットも持って行こう。あ、キットにカミソリ入ってる。これは下ろさにゃ。

結局救急キットの大きさは、トータルではそんなに変わらなくなった。ま、いいか!

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