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大晦日のほぼ正午、岡田港に帰り着いた私とメイト君だが、メイト君はともかく私はまずメシを食おうと思い港をうろうろする。岡田港を空から眺めればこんな感じ。

私が港に立った時点では船も高速船も着いておらず、まことに閑散としている。タクシーが1、2台待合所の前に停まっている他は、人っ子一人いないと言って良い。
待合所と道路を挟んで東側には、よくあるような土産物屋と食堂とが一緒になった店舗が数軒ある。さて何を食うかについては、もう島離れちゃうんだから名残を惜しんで、あのべっこう寿司を食べていきたい。見ればその貼り紙はぽつぽつあり、類似の料理であるべっこう丼の書き付けもある。店々を行ったり来たりしながら物色したあげく、観光案内所付設の食堂に入った。
付設というのはやや正確ではない。街の八百屋程度の広さに案内所があり、わずかながら島の土産も置いてある。その一角に数卓のテーブルを並べ、赤(だったと記憶する)ビニール張った昭和い椅子が置いてある。奥にはオフィスのキッチン程度の厨房がある。
そこにいるのはおじちゃんおばちゃんお2人だが、どうやら専従職員ではなく、漁協の方が兼務でそこに詰めているらしい。ここを選んだのは他でもなく、元町の案内所が好印象だったからだ。
先客には団塊のつがいが居て、おばちゃんと島の話をあれこれしている。私はとりあえず島魚のお吸い物付きべっこう丼をお願いし、茶をすする。すするのに飽きると土産物を物色し、ああそういえば、あんまり島にお金落としていないナと考えた。ゆえにほうぼうへ配る土産物、くさや・椿油・手工芸品などを求めるが、売らんかなならず、おばちゃん丁寧に対応してくれる。
くさやなどというものは、関東人じゃない人にうっかり差し上げるととんでもないことになる。腐っているとしか思われない。店に並んだそのくさやには、干したそのままと焼きくさやがある。おじちゃんおばちゃんが言うのには、焼きくさやをそのまま食べるのが酒の肴にうまいと言う。ゆえに自分用とおみやげ用に焼きくさやを求めた。
そうこうするうちべっこう丼が来る。

食べているとおばちゃんが話しかけてくる。
今日は風強いね。バイクの人は大変でしょう。雨なんか降っちゃうとそりゃもう気の毒で。え? もう帰っちゃうの、宿は? あ、テント。ならもっとゆっくりしていきなさいな。切符もう買っちゃったの? え~。キャンセルしちゃいなさいな、とおばちゃん言う。
その他、こういった状況でないと聞けないような、島のいい話悪い話を色々伺う。が、総じてやはり大島はいいところで、この島に住みたいと話していく人々も多いという。ただそう言った連中にはネンキン生活の団塊が多いらしく、となれば私がうっかり移り住むには躊躇せざるを得ないところだ。奴らが大挙してこの島に押し寄せ、団塊の島になってしまったらどうしようか。
(画像は北大理学部のページより拝借)
ずいぶんと話し込んで外に出たのは1時前だった。ついでに他の土産物屋も覗いていく。どの土産物屋のおばちゃんたちも、観光地の土産物屋特有のあの嫌らしさがない。この島ならではである。漁協のおばちゃん同様、今日は風が…雨の日は気の毒で…と同じ事を言う。へへへ、わしら慣れてますからと私も同じ事を言う。まるで帰省して親戚とおしゃべりする感じで、釣り込まれて私も口とがまぐちが軽くなった。
さてメイト君を船に乗せるまでは時間がある。だが早めに手続きだけでもと船会社のカウンターに向かう。荷物下ろしてよいこらしょ、大黒様のように受付に向かうと、馬の手続きは裏手の荷役所に行ってくれと言う。やれやれとそちらへ回ると、しっぽの長い港ニャンコがそこにいた。

この子は港で働く方々のペットになっているらしく、くたびれたアルミ鍋からご飯を食べている。荷役所に入ると、気さくな船会社のおニイちゃんがチッキを切ってくれた。
船出までにはまだまだ時間がある。暇をもてあまして待合所をうろうろする。と気付けばカメラの電池が切れており、こりゃイカンと電池を買う。やや割高ではあるが仕方がない。ただしこの時電池を買っていたおかげで、この後面白いことが色々おこった。
待合所にも飽きて外に出る。ふとメイト君の方を見ると、先ほどの港ニャンコが傍らにいる。
なぜだかはわからないが、私の乗騎はメイト君も重爆RS号も、ニャンコに気に入られることが多い。陋宅ではシートの上でご近所ニャンコがひなたぼっこしてるし、寒い夜には、野良ニャンコのねぐらにもなっている。重爆RS号を旅先でちょっと停めて缶コーヒー買って帰ると、タンデムシートに現地ニャンコが丸まっていたりする。そんな時は起こすと可哀想ゆえ、出発が遅れたりもする。
港ニャンコはまず前タイヤに猫パンチ。ついでニャニャニャと、タイヤで爪を研ぎ始める。メイト君には迷惑だろうが、私はいっかな気にならない。

よほど気に入られたようだ。
このニャンコの写真を撮ったりしていると、軽トラに乗った荷役の方がやってきて、そろそろ埠頭に来て下さいという。時間はまだまだあるが、早めにお仕事を済ませようというのだろう。は~いすぐ行きま~すと返事してメイト君にまたがる。バイバイ、港ニャンコ。
埠頭と言っても100mほどしか移動しない。コンテナが並んだそこに停め、それではよろしくと挨拶すると、荷役の親方も、もう帰っちゃうのと言う。
そりゃ~残念だな~、正月の朝にゃあね、島の若い娘が素っ裸になって、初日の出に向かって海ィ飛び込むんだぜ~。それ見てかないの。
そう聞いてその気になるような歳じゃなくなっちゃったのがザンネンで、と私もへらへら笑う。それ聞いて親方以下の荷役さんたちが爆笑する。親方はメイト君のあちこちを眺めながら、すんげーなー、新聞屋のバイクがこうなっちゃうんだ、おっ、ナビ付いてる、とか感想を漏らす。
メイト君をコンテナに詰める。

おぅ~いしっかり縛れよぉ。今日はうねり強いかんな。オーイ○○、シリぃ引っ込めろシリ。写真撮るんだからよ、と作業中親方が冗談言いっぱなし。へ~い親方と、若い衆も相性がばっちりだ。
船はまだ来ない。今日の上りは利島を回ってくるから、岬からいきなり現れると親方言う。キラキラ輝く波間の前で、親方・船会社のニイちゃん・荷役の若い衆と話し込む。
大島どうだった? この季節は宿取りやすかったでしょ。夏は大変でねぇ、あっという間にいっぱいになっちゃう。え? テント? それなら平気だぁ。また来るかい。来るって? ほうそれなら次は夏だね。え、もっと前に? 今度はリヤカー引いて長期滞在? そんなに大島気に入ってくれたのかい。
と親方、船会社のニイちゃんを振り向いて、リヤカーのこと会社に話しといておくれな、せっかく気に入ってくれたんだからよぉ、という。ニイちゃんも、リヤカーなら船内タダで持ち込めますぜとか、面白いことを言ってくれた。
と、親方の言葉違わず岬を回って、ひょいとかめ丸が姿を現した。
買った新しい電池をいいことに、かめ丸の写真をパシャパシャ撮っていると、いいのが撮れましたかと声がする。振り返れば婦警さんがそこに立っている。あれ、昨日三原山にいらした方ですよね、と尋ねると、そうですよと婦警さん言う。聞けば島の警官は、日によってあちこちを交代で回って仕事をし、特にどこそこの場所に詰めるわけではないらしい。
少々この婦警さんと話をした。この婦警さん、内地(と本州を呼ぶらしい)で勤務していたのが、辞令で島にやってきたという。もともと人助けがしたくて警官になったそうだが、島ではそういった本望がかなう機会が多くて楽しいとのこと。大変なお仕事ですが頑張って下さいと私も言う。
せっかくですから撮ってあげましょうと婦警さん言う。それじゃお願いしますと私も言って、港に入ってきたかめ丸を背景に一枚。
かめ丸が着岸すると、コンテナに詰められたメイト君が積み込まれる。

乗船口では、タラップをかける作業が始まった。これには船会社のニイちゃんのほか、地元の高校生や婦警さんも加わる。どこの島でもよく見られる光景だ。

用意が済むとまず下船客が降りてき、振り返ればメイト君が吊り上げられていた。

私も船に乗り込む。船会社のニイちゃんが、また来て下さいねと言う。婦警さんはお待ちしていますと言い、キリッと敬礼してくれた。
さ、いよいよこの島を離れねばならない。船尾から岡田港を振り返る。

と、この時間になって待合所に、バスやタクシーがやって来る。車降りた乗船客は、ぞろぞろとアーケードを歩いてくる。しかしかめ丸までは来ず、途中で固まっている。どうするんだろと見ていると、ボーイング製の水上ジェット船が2隻やってきた。なるほど、人の移動はこのジェット船セブンアイランド号がメインだもんな。

ジェット船が着いてほどなく、1430時、かめ丸は定刻通り船出する。

さようなら、伊豆大島。
ご機嫌よろしゅう、御神火様。
ありがとう、島の人たち。
また、来ます!

(つづく)

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