(4)


波浮港から三原山の登山口、御神火茶屋へと向かう。

時間はまだ9時前、しかも島とあっては、車通りは少ない道理である。

有り難いことに雲が晴れてきた。今日の天気は山登りには絶好となろう。
ふと海を眺めると、海上には利島がぽっかりと浮いている。

この、利島その他の景色は、この先何度も見ることになるが、その中には神の風景と言えるものさえある。自然はタダで、こうして目を楽しませてくれるわけだ。これは偽善でも何でもなく、例えば隕石に直撃されてあうっと死ぬことがあり得るように、自然は好き勝手に人を殺し、人間は好き勝手に自然を喜ぶのだ。
さらに進めば、道の両側は椿の垣根。

その垣根を抜けると、道は海沿いに出る。視界がパッと開けたそこには、これまた壮大な風景が広がっていた。

通称、バウムクーヘン。一周路の改良工事の際、綺麗な地層が現れたのを、保存したという。学術的にも重要らしく、触れるほどの距離での立ち入りは制限されている。大島火山博物館の説明文では、ここまで整った地層面は世界的にも希少なんだそうで、海外からも専門家がやってくるらしい。
こういった標本は大事にしなきゃね。地震の多い我が国なら、なおさらだ。偉い先生がこれ研究して、いつか地震のからくりを解き明かしてくれるかも知れない。ここで、もし故竹内均先生がご覧になったら、さぞお喜びだろうなと想像してうふふ。発掘年代的には、ご覧になっていてもおかしくなさそうだが。
バウムクーヘンを抜けてさらに道を進めば、元町港のまちへと下っていく。

元町は、島一番の繁華街だ。普段は、熱海や下田からの高速船がここに着く。ただし私が滞在中は、風強くうねり高く、かめ丸共々島北部の岡田港に着いていた。
まちはコンビニこそ見あたらなかったものの、商店や飲食店は数多くあり、旅の補給には十分だ。また、文化施設や温泉、学校行政官庁のたぐいも、ここに集中している。
元町に入る手前で道を曲がり、三原山登山道路へと入る。

登山道路だけに急坂である。画像は車載で撮ったため、地面と平行だからこの急坂具合が良くわからない。それでも現実は急坂ゆえに、メイト君にはややつらい。例によって2速で「みーっ」、3速で「もぉ~」、リッターマシンの感覚では、うるさいだけでちっとも進まない。だが、そこがいいのである。

お山の陰に入って道は進むから、どうかすると道は真っ暗だ。

みー、も~、を繰り返してやっと御神火茶屋前の駐車場に着く。時刻はようよう9時である。ここはバス停の終点でもあり、トイレとか休憩所とかの施設も整っている。ついでに例のハコも整って、朝まだ早いのに立ち番している。ただし内地のように陰険な目つきで市民をねめ回すのではなく、ニコニコ笑って行ってらっしゃいという。
さらにとんでもない設備まで整っている。これすなわち、某国賊力-屋の給電設備である。さてこそ分不相応の金持った団塊どもが、例の腐゜利薄のたぐいに乗ってやってくると見える。

この設備、島のあちこちに見かけた。実用化・普及化を前にした、実験なんだろうな。
団塊どもに出合わないことを祈りつつ、山男に変身することにする。とは言っても、バイクが停められそうな場所と休憩所は離れているし、第一まだ開いていない。
吹きっさらしの高台ゆえ、風がびゅうびゅう吹くし、その風は何とも冷たい。今、当時の気温を確認すると、麓の測候所で7.9度とある。御神火茶屋付近の標高は550mほどだから、さらに2、3度は低かったはずだ。
震え上がりそうになりながら、冬用乗騎装束を脱いでいく。
バイクにお乗りになる人ならおわかりだろうが、冬の装束は簡単に脱げる代物ではない。装備が充実していればしているほど、着たり脱いだりだけで一仕事だ。あるいは宇宙服の脱着を想像して貰えるといいかもしれない。しかしこのまま山登りなんかしたら、汗で装束の内側はびしょ濡れだ。
ずいぶん昔のことになるが、山形にあるかの有名な山寺(宝珠山立石寺)で、そのまま登ってえらい目に遭った記憶が蘇る。
それはまるで、水入れた金魚鉢を着て歩いているようなもので、何とも気持ちが悪いだけでなく風邪を引く。ゆえに面倒臭いが仕方がない。
ここで用意の衣装は、ユニクロにも行けない私がGUで買った、どうなってもかまわないようなウィンドブレーカーの上下である。乗騎装束の鎧を脱ぎ、外皮を脱ぎ、インナーも脱いでその上だけは背負い袋へ。
長袖シャツにもも引きという、まるで帰宅した波平みたいな格好を、公共の場に堂々とさらして着替えを進める。
背負い袋には先ほどのインナーの他、水、カロリーメイト、タオル、自作の雨具兼ツェルトを入れておく。これはもともとモンベルが出しているテンチョだが、カタログをためつすがめつしているうちに、これ自分で縫えるじゃんと思って作ったものだ。

1000mない山とはいえ、何が起こるかわからないからね! 一応、用心用心。
あとはストック2本とカメラとビノ。それでは、登るぞ!

(つづく)

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