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トンネルを抜けて越後に入る。そこはかの有名な越後湯沢である。
高速の左右には、どれも似たり寄ったりの逆立ち西洋長屋が建ち並んでいる。一見したところいずれのマンソンも、人が入っているような気配はない。無論まだシーズンではないから、入居者はいてもお留守なのかも知れない。
Sくんによれば、これらマンソンの値はダダ下がりで、今やわしらにも手が出そうな価格という。
毎月高ェゼニふんだくられて東京のあばら屋に住むよりも、こっちの方がよほどいいかなと思ったら、冬は鉄の馬に乗れませんよとSくんに言われる。しかも雪の上で田下駄を履いて、アメンボのまねする気が全くない私にとっては、のし上げる雪の冬をどうやって暇つぶしするか考えるところだ。ま、それはそれでいろんな事をやってのけるのだろうが、Sくんの慎重さを見習って、そんなことは考えないことにする。
頭をめぐらせて左手遙かをながむれば、そこにはJRがバブって作った駅と、アメンボの人のための山がある。今はまだ秋とて営業はしていない。冬になればいずれJRもセンデンを打つのだろう。そう言えばバブル期、JRはおやじ向けCMには小泉今日子を使い、この山のように若いの向けCMには、オスメスのさるを集めて踊らせていた。


今ここで大漢和を引くと、「おすのうし」「おすのおおかみ」「おすのぶた」といった漢字はあるものの、「おすのさる」「めすのさる」は無い。分類(と詩文)こそ知的活動だと思っていた中国人も、さるのオスメスには興味がなかったと見える。かようにどうでもいいさるならば、おそらくギャラをまとめても小泉1人とほぼ変わらなかろう。何の能もないというのは哀れなものである。
今は似たような仕事を、これまた集められた○人がやっているようだ。踊るのがさるから○人になったのは、それはそれでJRも我が国も進化したと見える。ただし連中には、ギャラの不満はないのだろうか。あれらはクンタキンテのお仲間だから、もしかするとギャラという概念が無いかもしれない。また○人だけに、いずれ不法滞在のたぐいだろうと私はニラんだから、国外追放にならないだけでもありがたいのかも知れない、あ、今なってるのか。
車はぐんぐん山を下って、越後平野に入っていく。前方に何やら巨大な構造物があるなと思ったら、まいたけ屋の工場のような農場だった。きのこ屋をすれば儲かりますねとSくんが言う。その通りだが、土地も資本もない私には手が出ない。
屋上にある説教臭い看板が目にとまる。きのこ屋はきのこの事のみを語っておればよろしかろう。私なら、どうせならマイタケの詳細な成分分析表を掲げるところだ。あるいは金払って、どこぞの教授とかにちょうちん論文書かせたのでもいい。巨大な看板に全文を掲げ、ドライバーが見とれて事故が増えても、私の知ったことではない。
南魚沼を抜けたこのあたりは、道はひたすらまっすぐである(画像はかつてのツーリングのもの)。天下に名の聞こえた米どころとあって、左右は広い田んぼである。2つめのまいたけ工場を通り過ぎる頃、道はやや蛇行し信濃川と交わる。
そろそろお昼にしましょうとSくんが言う。この先越後川口SAには、それはンまいおこわを売る出店があるという。
このSAもまた、北海道ツーリングで立ち寄ったことがあるのだが、そんな結構なものが売っていたとは知らなんだ。当時気がついたのはただ、珍妙な村おこしグッズのみである。ま、その時は早朝ゆえ、出店があっても気付くこともなかったに違いないが。
こたびは昼間ゆえ、SAの建物内に屋台が出、おっちゃんおばちゃんがぼんやりと立ち尽くしている。時間はとうに昼を過ぎているにもかかわらず、ずいぶんと売れ残っている。私が2人前を買い求めると、うれしそうに包んでくれた。かほどおいしいおこわなのに、それほど売れないと見える。気の毒なことだし、もっと売れればいいとも思う。
車に戻ってSくんと食す。んんんんん、こりゃンまい。おかずも何にもなくただお米だけなのだが、最高の米に上手な炊き方さえすれば、米とはこんなにうまいものであることを知る。
そろそろ日も傾き始め、やや雲が多くなってきた。
旅の日の晴天はありがたいものだが、おぼろ雲に日がかげる景色も、私は嫌いではない。
SAは信濃川からはるか高台にあり、見下ろせばうねった河が流れる、なかなかの絶景だ。普段遠くへ視線が行くことのない都会生活者にとっては、結構良い眼のリハビリでもある。
河川敷はほぼ畑である。あるいは刈り取りが終わった田んぼなのかも知れないが、いずれにせよ黒い地面がむき出しとなり、そこに働く人の姿もない。あたかも突然の怪奇現象で、誰もいなくなってしまった世界のようで静かである。
と目をこらすと、クワ担いでカブに乗ったお百姓が、豆粒みたいに移動していくのが見えた。
そんなこんなで、まだ目的地には着かないのに、結構な時間をこのSAで過ごした。心の洗濯とはこういうことを言うのであろう。(つづく)

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